広島民商の今年度学習会第5弾として9月24日(火)、広島県保険医協会の堂河内あずさ氏を講師に招き「医療をとりまくマイナンバー施策 問題だらけの保険証廃止」と題して学習会を行いました。会場の民商事務所4階は参加者でいっぱいとなり、オンライン参加も合わせると46名と過去最高の参加者数で、この問題への関心の高さを伺わせていました。
マイナンバーカードとマイナンバーとは?
マイナンバーカードについては様々な問題が挙げられますが、今回は健康保険証について詳しく話して頂きました。2023年の6月にマイナンバー法の一部改正法が成立。改正により12月2日に現行の健康保険証が廃止されるということで進んできている現状です。
そもそも「マイナンバー」とはすべての国民に強制付与された12桁の社会保障と税の共通番号のことを言います。「マイナンバーカード」はICチップに埋め込まれた「公的個人認証」を使って本人の証明と個人情報の幅広い収集を行うもので、言葉は似ていますがまったく異なるものです。そしてさらにカードには12月2日からマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証等の利用)が加わることとなります。
マイナ保険証利用の問題点
①地域の小規模医療機関を廃業に追い込む
マイナ保険証利用の大きな問題点の1つは「オンライン資格確認義務化」です。オンライン資格確認の義務化というのは、電子レセプトを請求する医療機関にオンライン資格確認システムの導入を義務とするというものです。
国はカードリーダーの機械を設置する費用の一部など、一定の費用は補助するもののネット回線の引き込みやセキュリティ対策等は自己負担。多くの医療機関は補助金だけではまかなうことができず、何十万、何百万も実費で負担する必要があります。
また、高齢者の多い地域によってはマイナ保険証を使う人などほとんどいないという医療機関にも等しく義務付けられることにより「負担に耐え切れない」「事務負担などに対応できない」小規模診療所は国の指導対象となり閉院・廃業せざるを得ない状況が生まれていることです。
②保険証の廃止が必要なのか?
この間、マイナ保険証では「顔認証ができない」「ネットワークエラー」「他人の情報が誤って紐づけ」等のトラブルの嵐が相次いで起こっています。
昨年5月マイナ保険証の相次ぐ誤登録で、政府は総点検(実際は全件点検ではない)を表明しました。政府の総点検後にも関わらず、2023年10月1日以降のマイナ保険証、オンライン資格確認に関するトラブルを医療機関で調査したところ、約60%の医療機関で「(番号なしや無効等)資格が確認できない」「(旧漢字等)名前や住所が●で表記される」トラブルがあったと回答。そのトラブル対応として「その日に持ち合わせていた健康保険証で資格確認」が8割を超えるなど本末転倒な事実な状態が報告されました。
また今後健康保険証が廃止された時の受付業務については「廃止後は受付業務に忙殺されると思う」「診療の待ち時間が長くなると思う」と多くの医療機関が懸念を抱えてます。
健康保険証廃止で何が起こるのか?
2兆円を超えるマイナポイント事業で、今年6月現在9千万余りの人がマイナンバーカードを作成していますが、実際マイナ保険証を利用している人はわずかに1割です。しかも、機器の不具合や登録の誤りで、情報が確認できないと誤った治療や投薬が行われる危険性があり、医療機関に過度な負担がかかります。
さらに新しくマイナ保険証を持っていない人に交付される「資格確認書」や「顔認証マイナカード」等、最大8通りの資格確認で、私たちはもちろんのこと、医療機関や行政窓口の大混乱が起こることが予想されます。
認知症などの利用者を抱える高齢者施設への影響についても「紛失時など事業者側の負担が増加する」「事業所内の担当が替わるため、情報漏洩など心配」という声が挙げられており、事業者が引き受けられなければ本人や家族の負担が増えてしまうことになりかねません。
従来の保険証を廃止し、本来任意であるはずのマイナンバーカードに保険証登録させることで、事実上カード取得を強制しようとしています。今後、交付も更新も申請が必要なマイナ保険証となれば、更新漏れで無保険状態を生み、国民皆保険を危機に陥れることになります。
保険証は生命を最優先に
政府はマイナ保険証のメリットとして「なりすましが防げる」「高額療養費や確定申告の手続きが簡素化される」などを挙げますが、保険証廃止のデメリットとは比較になりません。災害時にマイナ保険証がなんの役に立たないことは実証済みです。
また日々、生命の最前線で闘う医師の9割以上が「健康保険証を残す必要がある」と答えているのが現実です。
現在の保険証は来年7月末まで使用が可能です。その後も最長5年はマイナ保険証がなくても新しい資格確認書で受診は可能です。10月からマイナ保険証の解除手続きの受付が始まるので不安があれば解除も可能となっています。 この問題だらけの政策は私たちの運動で変えていくことはできるはずです。
保険証残せの運動を広げていきましょう!